車の売却をするというのは、主に「下取り」「買取」どちらかのことを指します。
これは主にどこに車を売るかの違いですが、この違いをしっかり把握しておかないと思わぬ損をしてしまう可能性があります。
- 下取りと買取、車を高く売れるのはどっち?
- 下取りの方が手続きがカンタンって聞いたけど…
今回は、主に「車の下取り」にフォーカスして解説していきます。
下記のような意外と知らない下取りと買取の違いや、メリット・デメリットもお伝えするので、あなたに合った売却方法が選べるようになっていますよ。
また実際に下取りする際に手間取らないように、事前準備まできっちり解説します。
それではまいりましょう!
車下取りとは「ディーラー」で売却すること
車下取りというのは、一言でいうなら「ディーラーに車を引き取ってもらう」ということ。
下取りができるのは、新車購入時しかありません。つまり車を買い換える時にスムーズな売却手段として利用できるのが、下取りなのです。
車を買い換える際は今まで乗っていた車を売却しなければいけませんが、ただでさえ新車購入には手続きが必要です。
乗っていた車を売却してから、新車購入では手間がかかりすぎるため、ディーラーが前の車を引き取ってくれるのが「下取り」というわけです。
ここでは、下取りの仕組みとメリット・デメリットを詳しくご紹介します。
車下取りの仕組み
車下取りは、上で書いたように「今まで乗っていた車に値段を付けてディーラーに引き取ってもらう」ことを指します。
仕組み上、車の買い替え時にしか利用できないため、車を手放すだけの目的で「車を下取ってほしい」と言っても不可能です。
車下取りは、新車の代金から下取り価格を差し引き、残ったお金を新車購入費用としてディーラーに支払うもので、ディーラーからお金が振り込まれるものではありません。
今まで乗っていた車の売却額を、新車の購入費用に充当するというものなのです。
対して、車と引き換えにお金を受け取ることは「買取」と呼びます。
ガリバーやビッグモーターなどの車買取店がこれに該当し、買い替えなしでただ車を手放したいだけのケースでも利用できます。
【下取りのメリット】車買い替えが簡単になる
ディーラーで車下取りを利用する最大のメリットは、やはり買い替えの手間が最低限で済むということです。
車を買い替える場合、車購入と車売却を同時に行わないといけません。
車購入を行う際、今まで乗っていた車を手放さないと車両の入れ替えができません。
そのため車を売却する先を探すわけですが、自分で買取店を見つけて査定を受けるのは結構面倒です。
これをディーラーに購入と合わせて依頼し、車に値段を付けて引き取ってもらうのです。
これなら、新車の購入も今まで乗っていた車の売却も、全て同じディーラーで一貫して行えます。
担当スタッフも基本的に変わらないので、車両入れ替えのタイミングなども全て調整し合わせてもらえます。
つまり、新車が納車されるタイミングでディーラーへ出向き、車を入れ替えたら買い替えが完了してしまうのです。
筆者自身も下取り・買取の両方を経験してきていますが、やはり売却に限っていえば下取りの方が簡単にできるのは間違いないでしょう。
【下取りのデメリット】売却額が安くなる傾向がある
一方で、売却額が安くなりがちというのが下取りのデメリットです。
ディーラーの主業務は、新車の販売とメンテナンス。下取りはあくまで「新車購入促進のためのサービス」であり本業ではないため、どうしても売却額が安くなってしまいます。
中古車を仕入れて自社で販売する買取店と比較すると、独自の販路を持たないため売却額が安くなってしまうのです。
この点をもう少し詳しく掘り下げましょう。
下取り価格の方が買取より安い理由
ディーラーの下取りだろうと、同じ車なのだから買取店と同じ値段を提示してくれてもいいんじゃないの?と思うかもしれません。
しかし、ディーラーの場合下記のような事情から買取店より安い売却額になってしまう傾向があります。
ディーラー下取りが買取より安い理由
- ディーラー下取り査定には「プラス査定」がない
- 下取り価格にはメーカーから基準が機械的に決まっている
- 自社での再販を前提としないため、積極的な値付けは行わない
ディーラーの査定基準はあくまで「年式と走行距離」をベースにしているため、買取店のような「プラス査定」がありません。
買取店の場合、買い取った車を自社で中古車として再販するため、人気のオプションなどが付いている、いわゆる「売りやすい車」は積極的にプラス査定をします。
しかしディーラーは再販を目的としていないため、こうした評価基準がありません。
また、人気車種かどうかを判断する材料も特にないため、中古車市場で人気の車であっても下取り額に反映されることはないのです。
下取り額は、自動車メーカーが機械的に概算を定めているため、ディーラーはその基準金額に従っているにすぎません。
以上が、車下取りの仕組みとメリット・デメリットです。
売却額は安くなってしまうものの、買い替えの手間が最低限で済むのは魅力です。
買い替えでの売却で、かつ手間をかけたくない人は、ディーラー下取りを検討しても良いかもしれません。
続いて、車買取の仕組みやメリット・デメリットについてもご紹介していきましょう。
車買取は「買取店」で売却すること
車買取は、中古車買取を専門にしている買取店で車を売却することです。
下取りと違って、ただ車を手放したいなど買い替え以外のタイミングでも利用できます。
車買取の場合、売りたい車に対する評価を個別に行うので、査定額の算出方法やチェック項目は車下取りよりもシビアです。
逆に、ディーラー下取りでは見過ごされるような人気のオプション装備なども、車買取なら正当に評価してもらえることになります。
【車買取のメリット】専門店だから車が高く売れる
車買取は、他と比較しても車を高く売ることができる方法です。
中古車の状態は1台ごとに異なるため、それを適正に査定するのは簡単ではありません。
買取店側は、中古車として再販した際にどの程度の金額をつけられるか計算し、そこから逆算して買取金額を提示しています。
買取店の多くは、業者間で中古車売買が行われる「業者オークション」の落札相場データを用いて、市場ニーズを反映した正確な査定を行っています。
年式や走行距離から機械的に算出するディーラーの下取りと違い、買取店は「プラス査定」というものをしてくれます。
これは、中古車として再販した際に評価が高い装備が装着されていれば、査定額に加算してくれるもの。
そういった装備は再販の際に「売り」になるため、その分お金を出して買い取りますよ、というわけです。
純正オプション以外にも、アフターパーツとして取り付けたものも対象となります。
さらに各買取業者を競争させれば、高価買取が期待できます。
車一括査定を使うとカンタンに複数の買取業者に査定依頼ができます。
【車買取のデメリット】車購入と車売却が別手続きになる
車買取のデメリットはディーラーと対照的で、車を買い替える時は手続きが面倒になるということ。
車下取りの場合は非常にシンプル。新車購入費用から下取り代金を差し引いてもらい、残りをディーラーに支払います。
乗り換えも、納車の際に前の車をディーラーに渡せばOKです。
しかし買い替えで車買取を利用する場合、
- 買取店から売却額を現金で受け取る
- ディーラーに新車購入費用を支払う
これらは別々のタイミングになります。
ディーラーに購入費用を支払う前に、買取店から売却額を受け取っておく必要があるでしょう。
そうでないと一時的に売却額分を自己負担しなければいけないからです。
それには新車納車前に、前の車を買取店に引き渡すしかなく、車がない日々が続く可能性があります。
また車購入はディーラー、車売却は買取店とお店が別なので、双方のスタッフと連絡を取り合う必要が出てきます。
ディーラーに事情を話せば納車までの代車を貸し出してくれる可能性もありますが、交渉が面倒な方には車買取は向きません。
車下取りが向いているかどうかの判断基準
「ディーラーでの下取りにするか・車買取にするか」の考え方は非常にシンプル。
手続きのシンプルさを取るか、高く売れることを取るかの二択になります。
車下取りを利用した方がメリットが大きいのは、以下のタイプに当てはまる方です。
(1)買い替えの手間をなるべく減らしたい
何度かお伝えしていますが、ディーラーによる下取り最大のメリットは、手続きに手間がかからないことです。
新車購入と車売却のどちらも同じ店で行うので、手続きや乗り換えが非常にスムーズ。
新車購入では、メーカー都合で納車が遅れるというのもよく聞く話です。
こうした時、今乗っている車を手放すタイミングを調整できるのが、下取りのメリット。車の引き渡しが、新車受け取りと同時にできるのも大きいでしょう。
「手間なく、簡単に車を売りたい!」という人はディーラーの下取りが向いてるといえます。
(2)値段がつかないような古くてボロボロの車に乗っている
ディーラーの下取りは、買い替え促進サービスという性質も持っています。
今乗っている車を簡単に手放せるようにすることで、新車購入のハードルを下げているのです。
例えば「今の車を売ってからじゃないと新車が購入できない」という決まりだとしたら、新車購入をためらう人は多いでしょう。
そのため、値段がつかないようなボロボロの車でも、無料または数万円で引き取ってくれることがあります。
車買取の場合、再販できる見込みがない車に買取価格はつきにくく、逆に処分料を取られる可能性もあります。しかしディーラーではそうした心配はいりません。
買取店で断られたような古い車を売却するは、ディーラーで引き取ってもらえないか相談してみるのがよいでしょう。
ここまでの内容で「ディーラーでの下取りを利用してみよう」と思った方は、以降の内容もぜひ読んでみてください。
車下取りの流れや必要書類についてもしっかり解説してあります。
この通りにやれば安心!車下取りの利用方法と流れ
では、実際に車下取りを利用する時のため、手続きの流れを押さえておきましょう。
車下取りの流れ
- ディーラーで購入する車を選ぶ
- 同じディーラーで下取り価格を算出してもらう
- 査定額の交渉をする
- 購入した車と入れ替える
1.ディーラーで購入する車を選ぶ
車下取りを利用するためには、まずディーラーで車を購入する必要があります。
好みの新車を選び、見積もりを依頼しましょう。
2.同じディーラーで下取り価格を算出してもらう
査定だけならどのタイミングでも可能です。
ディーラーによる下取り査定は確認項目が少なく、30分程度で完了します。購入する車の試乗中に査定をしてもらう等もできますよ。
3.査定額の交渉をする
機械的に金額算出される車下取りであっても、ある程度の金額交渉は可能です。
数十万円も金額が変わることはないものの、交渉次第では数万円の査定額アップも期待できるでしょう。
金額に納得したら、新車契約と合わせて下取りの契約も行います。
4.購入した新車と乗り替える
下取りの場合は、新車と入れ替える時までその車に乗り続けることができます。
新車納車に合わせてディーラーに車を持込み、入れ替え作業をすれば終了です。
以上が車下取りの流れです。基本的にスタッフの指示に従えばよいので、非常に簡単。
しかし気をつけなければいけない点もいくつかあります。次はディーラー下取りの注意点をお伝えしていきます。
車下取りで気をつけたい3つの注意点
車下取りは手間がかからない便利な方法ですが、知識がないまま利用すると損をしかねない注意点も存在します。
車下取りの3つの注意点
- 査定料を取られるケースがある
- 新車値引き額と下取り額があいまいになる
- 純正パーツ以外はマイナス評価になる
査定料を取られるケースがある
昨今では珍しいケースですが、ディーラーによっては査定料を取られるケースがあります。
5,000円程度の査定額に設定され、下取り価格から引かれている時があるのです。下取りの際は、明細をしっかり出してもらうことが大切です。
明細に「査定料」という項目があれば、無料にしてもらうよう交渉しましょう。
新車値引き額と下取り額があいまいになる
新車購入では「新車値引き」というものがあり、数十万円単位で値引きをする文化があります。
車下取りも「下取り額を新車購入額から差し引く」という点は同じであるため、下取りを利用すると、値引き額と下取り額があいまいになってしまうのです。
たとえば40万円の値引きが可能な車があったとします。
しかし、値引き額は公表されているわけではないので、ディーラー担当者が「30万円が限界です」と言えば、それが限界値引き額になってしまいます。
ここで10万円の差額が生まれましたが、この10万円を下取り価格に上乗せするのです。
そうすれば下取り価格が10万円高くなったように見えます。しかし実際のところ、本来可能だった値引き分を充当しただけです。
逆のパターンもあり、下取り額をわざと低くし、それを車両値引きに転換して多く見せるのです。
このように値引きと下取り額を自由に操作できてしまう以上、内訳があいまいになってしまうのです。
車下取りを利用する際は、新車値引き分と下取り額がわかるように分けて見積もってもらってください。
純正パーツ以外はマイナス評価となる
ディーラーの下取り査定では「純正かどうか」が大きく影響します。
下取りにプラス査定はないので、純正状態なら減額なし、純正から変わっている状態は減額となります。
社外品のアフターパーツなどを取り付けているとマイナス査定となるので注意しましょう。
買取店の場合、中古車で人気があるパーツなら、社外品でもプラス査定とされるケースがほとんどです。
以上が車下取りにおける注意点です。次は、車下取りに必要な書類について解説します。
車下取りの必要書類
実は、車下取りも車買取も必要書類は全く同じです。
車下取りに必要な書類を、普通車と軽自動車のケースに分けてお伝えします。
普通車の場合の必要書類
普通車の場合、必要書類は以下です。
- 自動車検査証(車検証)
- 自動車リサイクル券
- 自賠責保険証明書
- 印鑑登録証明書
- 自動車税納税証明書
- 実印
車検証と自動車リサイクル券、自賠責保険証明書に関しては、ひとまとめにして助手席側のダッシュボードに収納されている場合がほとんどです。
また自動車税納税証明書に関しては、紛失してしまっても問題ありません。最新の自動車税を納付していることが大事なので、未納でない限りは気にしなくて大丈夫です。
普通車を下取りしてもらう場合、実印と印鑑登録証明書がセットで必要となります。
また、下取りの手続きには、上記以外に「委任状、譲渡証明書」が別途必要になります。
これはディーラーで用意してくれるので、自分で用意する必要はありません。
軽自動車の場合の必要書類
軽自動車の場合は、普通車よりも必要書類が少なくなります。
- 自動車検査証(車検証)
- 自動車リサイクル券
- 自賠責保険証明書
- 軽自動車税納税証明
- 認印
軽自動車は認印で書類作成ができるため、実印や印鑑登録証明書を用意する必要がありません。
また自動車税納税証明書の代わりに、軽自動車税納税証明が必要です。軽自動車も毎年自動車税を収めますが、都道府県税ではなく市税です。
そのため、同じ書類ですが普通車の場合と名前が異なるのです。軽自動車の下取りでも委任状が必要ですが、これもディーラーが用意してくれるので問題ありません。
以上が車下取りの必要書類です。ここまで押さえておけば車下取りは問題なく行えるでしょう。
ただ「下取りを依頼するかどうかは金額次第」という人もいることでしょう。
実は、下取り価格相場はネットで調べることができます。予備知識として覚えておくと売却時に役立つはずです。
下取り価格はネットで公開されている
下記はトヨタの下取り参考価格シミュレーションサイトです。
あくまで参考価格ですが、下取りを依頼する場合の指標として見てみるのもよいでしょう。
- メーカー、車種、年式を選ぶ
- モデルを選ぶ
- グレードを選ぶ
このサイトでは上記3ステップで、下取り価格を調べることができます。
モデル選択時に型式などが必要になるため、車検証を手元に用意しておくことをおすすめします。
注意点として、走行距離や事故歴などを入力する必要がないため、価格は正確とは言い切れません。
そのためディーラーで実際に査定してもらった金額と異なる可能性もあります。
これらのサイトで下取りの査定相場を調べ、その結果を踏まえ買取店で査定してもらう使い方をおすすめします。
まとめ
今回は、車下取りについて詳しくご紹介してきました。車下取りと車買取は同じ「車を売る」方法ですが、売却先が異なります。
車下取りはディーラーに売却、車買取は買取店に売却することを指します。
改めてそれぞれのメリット・デメリットを載せておきましょう。
どちらか悩んでいる方は、下取り参考価格はネットで調べることができるので、まずは愛車の値段を調べてみましょう。
その金額を参考にして、買取店で査定をして納得できる売却先を選ぶのが賢い方法です。